鬱な現実~うつしぐさ~

うつ病者及びスキゾイド症者の語るしくじりだらけの人生

軌跡~ある教員サークルの興亡~17

 

当時は、人と深い親交を望まずに孤立しがちなパーソナリティ障害・統合失調質人格障害(=スキゾイドorシゾイド)とは気付いていません。

だから抱えている寂しさも、人付き合いの下手さも、いずれ乗り越えられると信じていました。

 

人は変われる。

自己啓発本の多くに書かれているこの金言を心のどこかで信じていました。作り物の心のどこかで。

だからサークル活動が終わった後に必ず開かれる飲み会で、「友達がいないんです」と冗談めかして言ったりもしました。

先輩方から何かしらのアドバイスをもらえると期待してです。

「友達は作るものじゃなくて、できるものだからなぁ。気長に待つのがいいよ」と本須賀さん。

「河合君は優しいし、思いやりがあるし、誠実だし、友達が出来ないわけないんだけどな」と畑野さん。酔っぱらっているのか、さもなければ致命的に人を見る目がないかです。優しいのではなく、優柔不断。思いやりがあるのではなく、嫌われまいとちっさい脳みそをフル回転させているだけ。誠実なのではなく、融通が利かないほどに一般常識を忠実になぞっているだけです。

「友達か。そういや築地も友達いないって言ってたな。二人で友達同士になれよ」と桃野さん。無茶苦茶です。

けれど、実際に二年の築地さんの隣に座らされ、会話をするよう強いられました。今思えばパワハラのような気もします。いや、学校でのハラスメント(=いやがらせ)なので、アカデミーハラスメント、略してアカハラだったのかと。

 

 

話せと言われたって、そもそもが口下手です。

そううまく話せるはずもなく、築地さんとの間に居心地の悪い会話の真空空間が形成されるだけでした。

救いと言えば、そうした一連の流れを大和撫子の染谷さんがおかしそうに笑ってくれたことでしょうか。馬鹿にするのでもなく、漫才の出し物を見ているかのように屈託のない、そして楚々とした笑みでした。

 

ともあれ、人付き合いについて先輩と言えど効果的なアドバイスをすることは難しいのだという気付きにはなりました。

一番ためになったのは、一番一般的な答えだった本須賀さんの「友達は作るものじゃなくて、できるもの」という言葉でしたから。

一般論です。

ですが、一般に普及するほどに説得力のある論理なのですから、やはり効能はあります。

もしかして、一般論を多く口にすればするほど、その人は多くの癒しを与えられる存在になり得るのかもしれません。