軌跡~ある教員サークルの興亡~27
思えば、白山さんには迷惑をかけたものです。
それも、多大なる迷惑を。
サークル活動のことを書くつもりが、チューターへの片思いについての物語となってきているのは、カトリック教会で自らの罪を述べ、赦しを得ようとする告解のつもりかもしれません。
伝わるはずが無いと思いつつ、謝意を示したいその一心です。
許されることでもないので、ただ頭を下げるのみです。
ですから、この片思いがどう終結したかだけは、ここで書いてしまおうと思います。
白山さんをお茶に誘った日から、自分の頭の中で何度も何度も会議が開かれました。
議題は、自分が白山さんに嫌われていないか、あの日の対応の冷たさは本当に風邪と忙しさのためだったのか、そして何よりも、これからどうするのか、主にこの三点についてです。
いくら考えても出る結論はいつも同じ。
もう一度会って、直接に確かめるしかない。
年の明けた一月、二月は、予備校生の一年の努力が試される時期。
そんな時に鼻の下を伸ばして、へらへらとチューターに会いに訪れる大学生。
予備校生にとってみれば、喧嘩を売りに来たと見られても仕方ありません。
三月は、一通り試験が終わり、予備校は次年度への準備が忙しい時。
そう考えて、白山さんの下へ行くのを伸ばし伸ばしにしていました。
何かと理由を見付けて、自身に言い訳しているというのも胸の内では気付いていたのですが。
そして四月、魔が差したのか、後に罹患する躁うつ病の躁部分だけがここで発現したのか、または自己啓発本でも読んで「やらずに後悔するよりやって後悔すべき」との文言に刺激されたのか、変に気持ちが高ぶり、会いに行こうと思い決めました。
そこですっぱり予備校に乗り込んで、「実のところ、どうなんですか?」と訊ければよかったのです。が、うじうじ君の自分は「行こう」と決めただけで、特攻までは出来ませんでした。
自分かわいさのためなのか。かわいくないのに。
それまで一応真面目に勉学に励んでいたため、四年生で取らなければいけない単位は卒論のものだけでした。
それが余計いけなかった。
時間があるために、余計ぐずぐずし、白山さんを予備校の外で待ち伏せするようになってしまったのだから。