鬱な現実~うつしぐさ~

うつ病者及びスキゾイド症者の語るしくじりだらけの人生

軌跡~ある教員サークルの興亡~28

 

ストーカー脳はあると思います。

好きな人の気持ちや自分を取り巻く状況を、自身の都合のいいように改変、解釈してしまう認知のゆがみです。

自分もその思考に、ズボリと落ち込んでしまっていました。

 

大学四年に上がった年の四月上旬、予備校の前にチェーンのコーヒーショップが開店しました。

店の歩道側は全面ガラスで、予備校の出入り口がよく見通せます。

待ち伏せ、張り込みにはうってつけの場所。

ストーカー脳は、偶々その時期に開店したのを、運命に変換しました。

四月に会いに行こうと決めた時に、ちょうど待ち伏せに相応しい店が用意されたのだと都合のいい解釈を行ったのです。

 

 

待ち伏せて、偶然出会ったふりをする。

その無理矢理の遭遇を、運命のめぐり逢いとするストーカー脳。

純ストーカーではないので、それはさすがに強引だろうと、頭の別の部分がたしなめたりもします。

ですが、機会を逃したくないとする脳内議場の声が圧倒的でした。

これまで通り、校内に乗り込んで行けばいいようなものの、それが出来なかったのは前回の冷たい対応で委縮していたためです。

 

それでも、本物のストーカーにはなれない。

もちろん、なりたくありませんが、我を忘れるほどの恋心で胸を満たし得ない自分をおかしいと思い始めたのもその頃です。

自分が何か足りない人間だと、ぼんやりながら気付き始めていました。

オタクにもなれない、ストーカーにもなれない。

何に対しても本気になれない感情の冷えを感じていました。

あるいは、白山さんに付きまとったのは、真に心を揺り動かしてほしいとの考えがあったためかもしれません。

相手のことを考えない一人よがりではあるのですが、すがれる人はもう彼女しかいませんでした。