鬱な現実~うつしぐさ~

うつ病者及びスキゾイド症者の語るしくじりだらけの人生

軌跡~ある教員サークルの興亡~39

 

すると横から瓶を手に取り、一口分を自分のグラスに注いだ畑野さんが、それを口に含んですぐに咳込みました。

「きついよー、これ。一気に飲むお酒じゃない。やめときなよ」

本須賀、畑野カップルに諭されて桃野さんは不服そうでしたが、「それ飲めよ」と言いおいて、自分のビールに戻りました。

なんだか普段の頼りがいのある先輩としてのイメージとは異なっています。

やはり母校の授業を貶してしまったせいなのか、と改めて反省しました。

 

 

痛い目に遭ったので、久慈さんの物真似も諦めます。

人は人、自分は自分です。

と、そう考えるのですが、いつも「自分てなんだ?」のところで思考は停滞してしまいます。

十代終わりの時期特有の自分探し病に捕らわれていました。

 

内省的になるとアルコールがよく回るのか、意識が途切れ途切れになって来ます。

サークルのメンバーが何か話して笑っていますが、酩酊した頭では意味を掴むことが出来ず、とりあえず自分は笑顔を保つことだけでその時間を過ごしました。

 

二時間も経てばすっかり出来上がっていましたが、いつの間にか罰ゲームの酒瓶は空になっています。

かなり深い酔いの状態で店を出たので、真っすぐに歩けません。

前からやって来た中年男性にぶつかりそうになり、危ういところで体を避けます。

その際に、夜道によく響く舌打ちを受けました。

それでも歩こうとすると、左方向に重力が掛かっているかの如く、体が勝手にガードレール方向に寄っていきます。

「危ないよ」

大和撫子の染谷さんがこちらの腕を取りました。柔らかな手の感触が腕から脳へ伝わります。