鬱な現実~うつしぐさ~

うつ病者及びスキゾイド症者の語るしくじりだらけの人生

2018-06-01から1ヶ月間の記事一覧

軌跡~ある教員サークルの興亡~39

すると横から瓶を手に取り、一口分を自分のグラスに注いだ畑野さんが、それを口に含んですぐに咳込みました。 「きついよー、これ。一気に飲むお酒じゃない。やめときなよ」 本須賀、畑野カップルに諭されて桃野さんは不服そうでしたが、「それ飲めよ」と言…

軌跡~ある教員サークルの興亡~38

「河合は罰ゲームだな」 母校の授業を幼稚と言った自分に下された刑は、300ミリリットルのにごり酒を空けること。 その日のサークル活動後の飲み会で、桃野さんにそう宣告されました。 気まずさをひきずるより、こうして笑いに紛らせてくれた方がいいかと思…

軌跡~ある教員サークルの興亡~37

言ってしまったものは仕方ありません。 「高校生対象の授業で、国語の教科書を皆で同時に音読するのは少し子供っぽいかと思いまして……」 「幼稚」と言った部分をいくらかマイルドにして指摘しました。 少なくとも自分の通った学校で、合唱のように教科書を皆…

軌跡~ある教員サークルの興亡~36

孤立癖のある自分は団体行動、団体生活に向いていません。 故にサークル活動にも向いていなかった。これは確かです。 思い返せば、団体に溶け込もうとして間違った努力もしたものです。 だから、時によって友好的であったり、クールを気取ってつっけんどんで…

軌跡~ある教員サークルの興亡~35

憧れと恋愛感情とは親和性が高いものです。 だから、自分も勘違いしてしまったのだと思います。 自分は白山さんに恋をしているのだと。 スキゾイドの人間でもそう感じたのは、憧れだけならば心が無くとも持つことができるからではないでしょうか。 憧れは言…

軌跡~ある教員サークルの興亡~34

心が欠如しているとはいえ、四年間抱いていた気持ちが蒸発してしまって、自分には本当に何もないんだと、体と頭の中に空虚さが広がるのは止められませんでした。 白山さんを好きでいることは、自分を自分として成り立たせる精神の支柱になっていたと考えてい…

軌跡~ある教員サークルの興亡~33

仕方なく、追いつくよりも見失わないことを最優先にします。 時折、背の高い人が間に入ると、つま先立ちで背を高くして視界を確保しました。 中学一年の時に散々チビとしていたぶられたのが嫌で、靴の中で背伸びをして身長を稼いだ経験が生かされました。 ま…

軌跡~ある教員サークルの興亡~32

またスツールがガタっと鳴りました。 今度は自分が急に立ったためです。のけぞったからではありません。 「あら、もっとゆっくりしていって」 隣の夫人が申し訳なさそうに言います。 ケータイの電源を落とさせたために、席を立ったのかと勘違いさせてしまっ…

軌跡~ある教員サークルの興亡~31

(なに?!)と横を振り向いた時に、その勢いの激しさで座っていたスツールが斜めになり、ガタっという音を立てました。 「ごめんなさいね、突然」 言ったのは、右隣に座る中年女性でした。 水色のチェック柄のブラウスに、藍色のスカーフを肩から掛け、やや…