鬱な現実~うつしぐさ~

うつ病者及びスキゾイド症者の語るしくじりだらけの人生

2018-07-01から1ヶ月間の記事一覧

軌跡~ある教員サークルの興亡~52

車は不勉強なので車種は分かりませんでした。 マーチとかその辺の、町でよく見かけるタイプの車だったと記憶しています。 前述したとおり、本須賀さんがハンドルを握り、助手席には畑野さん、その後ろが空いていて自分が座り、運転席の後ろ、つまり自分の右…

軌跡~ある教員サークルの興亡~51

「じゃあ行こう。お台場の方を回ってみようよ」 お台場……。 確か自分が大学生になったくらいから、東京のデートスポットとして注目され始めた場所です。 確実に縁が無いので、そこに何があるのか、何ができるのか、そもそも東京のどこにあるのかを知りません…

軌跡~ある教員サークルの興亡~50

夏休みに入ったからといって、特別楽しい気持ちにはなりません。 友達がいないのですから、誰からもどこかへ行こうとの誘いもなく、家に引きこもって本や漫画を読んだり、テレビゲームをしたりと、何の生産性もない自堕落な生活を送っていました。 家族とも…

軌跡~ある教員サークルの興亡~49

「友達でいましょう、って言ったんだよね?」 米野さんの友人である染谷さんも会話に参加し、話を進めました。 どちらかと言えば控え目な彼女にしては珍しいことです。 あるいは染谷さんも、飲み会で盛り上がるお約束のネタである恋愛話にのぼせていたのかも…

軌跡~ある教員サークルの興亡~48

「私がバラしたこと秘密にしてくださいね。次の日に久慈さんと会った時も、書類ケースの中を見たなんて口にはしませんでしたから」 米野さんは特に自分の方を見て強調しました。 「久慈に訊かれなかったのか?中を見なかったかって」 桃野さんの問いに、「訊…

軌跡~ある教員サークルの興亡~47

「おいおいおい、そこまで喋って先を言わないのは酒が足りてないからじゃないか?」 と桃野さん。 こういう時の、強引さが必要な場面では頼りになります。 彼は、誰かがまとめて注文した時に余っていたカルピスサワーを米野さんの前に置くと、「いいか、米野…

軌跡~ある教員サークルの興亡~46

「それに」 米野さんは一段階声のボリュームを上げました。 「この間久慈さんとレストランに行った時、あの人がいつも持っている鞄とは別に書類ケースを持ってきていたんですけど、それを店に忘れて出てしまったことがあったんです。半透明のプラスチックの…

軌跡~ある教員サークルの興亡~45

人間関係がほぼ無くなりつつある大学生活において、サークルは自分にとって貴重かつほぼ唯一の人と関わる場となっていました。 だから、それほどドラマチックなことが起きるでもなく、単色の生活が続くかに見えたある日、それは突然に訪れました。 久慈さん…

軌跡~ある教員サークルの興亡~44

一方、恋している女子の米野さんは、二年の久慈さんに対して猛烈にアタックし、二人で出掛けるようにもなったと言います。 それを教えてくれたのはやはり畑野さんです。 「堅物の久慈君と、乙女真っ盛りの米野さん、二人でどんな会話してるんだろうね?」 桃…

軌跡~ある教員サークルの興亡~43

桃野さんが染谷さんを狙っている。 これは面白いことになったと思う自分がいます。 いつもピンクやらオレンジ色やら緑色やらの派手なTシャツにブルージーンズを履き、亀の子たわしのようなつんつん頭に銀縁眼鏡といったスタイルをしている桃野さんです。 顔…

軌跡~ある教員サークルの興亡~42

サークルの長である桃野さんが飲み会大好き人間であるため、何かと機会を見付けては居酒屋に誘われていました。 「飲みにケーションだよ」と、当たり前に口にする人です。 昭和の遺物そのままに。 誘いは強引でしたが、行けばほどほどには楽しかったので断っ…

軌跡~ある教員サークルの興亡~41

駅までの道すがら、壁や店のショーウィンドウに手を付いて歩きつつ、染谷さんに尋ねました。 「染谷さんは弟いるでしょ?」 一瞬彼女は虚を突かれた顔をしましたが、なぜこちらがその問いを発したのかをすぐに理解して、「うん、二つ下と四つ下の二人。三人…

軌跡~ある教員サークルの興亡~40

(女の子の手だ)。 一気に酔いが醒めました。 が、自らの腹黒さと下心が発現し、ガードレールから歩道の中央に戻った際に偶々を装って染谷さんの手の甲に触れてみました。 すると彼女は、「しっかり」と言って、こちらの腕を支えていた手を離し、その手で右…