切符で遊ぶ
昔、祖父と電車に乗ってどこかに出掛けた時のこと。
当時はまだ切符を買って電車に乗る時代。
駅員が切符にはさみを入れて乗り降りを管理していたという、今から考えれば隔世の感がある、そんな時。
切符を縦にすると、一番下に四つの番号が並んでいた。
「3 2 5 7」とか、「8 4 1 6」とか。
祖父と自分とが連続して買った切符でも、番号はバラバラだったから(多分)、発行順でなく、何かしら意味があったのだと思う。
祖父と幼い自分とでは、それほど共通した話題はなく。
けれど、幼い子供が退屈すると何をするかわからないからか、祖父は自分に遊びを教えてくれた。
その切符の番号を使って「10」を作ってごらん、と。
3 2 5 7だったら、(3+2)×(7-5)=10という風に、四則演算をして、何種類もの式を作ったり。
そういうささやかな遊びが、無性に楽しかった。
他に楽しいことがなかったせいもあるのかもしれない。
今は、スマホとかウォークマンとかで乗車時間は楽に潰せるけれど、時々、適当な数字を看板か何かで見付けると、四則演算をしたりしている。
そういうささやかな楽しみが、世の中に溢れていた時代。
そんなところに郷愁を感じる。