狂った音叉を持つ精神
自分のうつ病の症状を考える時、真っ先に浮かぶのが、くよくよが止まらないこと。
うじうじした気持ちがいつまでも続くのです。
健常者ならば、音叉をハンマーで打ってもやがては静まっていくように惨めな出来事、哀れな気持ち、受けたショックが消えてゆくのにそれが自分にはありません。
と書きましたが、音叉ってなんでしょ?
形や使い方は知っていますが、何の役に立つのかど忘れしてしまいました。
U字型の器具で、ちっこいハンマーで叩いて音を出すものです。
調べると、音叉から出る音は純音=一つの周波数からなる単調な音、なので、楽器の調律に使うのだそう。
そう、コーンと鳴って、普通だったら、「コーン……」と「……」部分で音は消えます。
が、うつ病者である自分が衝撃を受けると、「コーーーーーーーーーーーーーーーー」と、いつまでも受けた時の打撃が心を打ち続け、止まないのです。
もちろん、いつかは止まりますが、気にしているといつまでも消えません。
しかも、通常の音叉のように音がどんどん小さくなるということもなく、受けた時の衝撃がそのままの大きさで胸に迫ってくるという。
さらにうつ病者の音叉は敏感で、通常なら問題にならない些細な音をキャッチし、心を振動させます。
例えば、道ですれ違った人から見られた、こんな小さなことでも「何か目に付く特徴が出ているのだろうか?」、「見ずにはいられない変な格好しているのだろうか?」、「生きていていいのだろうか?」とまで思い至ってしまいます。
だから、本当に大きな衝撃を受けた場合のショックは相当なものです。
「うつ病だからって甘えんな」とか、「みんなつらいんだから、自分を特別と思うな」とか言われると、ズーンという打撃音が心臓の鼓動と同じかそれ以上の速さで、重く痛く精神を削りながら響き続けます。
こういう時に寝込んでしまうこともしばしば。
寝込めない時は、それはもう悲惨なことに。
簡単なことでもできなくなってしまいます。
ペンを握る。ひらがなを書く。こういうことも怪しくなります。
能力が著しく低下します。
どう対処すればいいかは、何年も付き合ってきているうつ病ですが、わかっていません。
一番の解決法は寝ること。
睡眠は忘却効果を持っています。
それを利用して、音叉の音を一時的に緩和させます。
普通の人なら寝れば音は再現されません。
うつ病者である自分は、完全に再現されることもあります。受けた時のショックを受けた時の大きさ、そのままに。
そういう時はまた睡眠を使う。寝ることは、一時的に死ぬこと。
少しの救いにはなります。
忘れることはできないけれど、距離を置くことはできます。
時間を緩衝材として。
こんな風に受けた苦悩がいつまでも消えないのが、うつ病の特徴的な病状の一つだと考えます。
大なり小なり、こういった状態に陥ってしまうことはあるかと。
勝手な類推なので、当てはまらない方も多くいらっしゃるかと思いますけれど。