ニキビの話の寄り道に:コンプレックス列記
ニキビがコンプレックスだった。その前回の話の続きです。
十代半ばから二十代前半まで、そのコンプレックスに苛まれました。
治ったのは大学を卒業してからです。
まるでタイミングを計ったかのように、外見が一番気になる思春期にクリーンヒットです。
どれくらい酷かったか、うつ病で記憶が遠ざかる前世のことなのであまり覚えていないのですが、とりあえず写真に写るのを極度に避けるほどでした。
だから、当時の写真はほぼ残っていません。
高校のアルバムに乗っていたかもしれませんが、卒業式当日に自分の写真をくり抜いて破り捨てましたから面影を辿れません。
いじめられていた過去の自分を消し去りたかったんです。
でも、ふと思い返して書類入れを攫ってみると、二十歳頃の写真が二、三枚出てきました。
それは捨てられなかった。
というのも、小学生時代の初恋の女の子と写ったものだったからです。
同窓会で撮ってもらったのを捨てずに持っていました。
自分の顔を見ると、本当にうんざりします。
頬も鼻もブツブツで、南国の、熟れ切って腐りつつある果実のよう。
なぜか目を細めるのが格好いいと思い込んでいた時期で、狐目のえらく不自然な笑いが顔に張り付いていました。
初恋の女の子はまっすぐにカメラの方を向いて目をぱっちりと開けて、パッと見にはモデルのよう。
綺麗になっていました。
そんな彼女の隣にいる自分はなおのこと無残に見えます。
その経験もあってそれ以降も写真には写らないようにしています。
ニキビが治った今も。
ニキビがあってもなくても綺麗な顔じゃないのだから、わざわざ記念に残して見返したいものではありません。
ところで、若い頃ニキビで悩んだ人と言うのは長寿になる可能性が高いという記事を何かで見ました。
ニキビができるというのは、それだけ体の中から老廃物を外に出す力が強いということ。
だから、危ないのは若い頃から肌がきれいな人なのだそうです。
そういう人は外に汚いものを出せず、内に内にとよごれを蓄積してしまうことがあるのだという。
遺伝子の染色体にテロメアという物質があります。
それは細胞の末端にあり、細胞分裂しても複製されず、分裂の度に短くなります。
100歳以上の長寿の人は、このテロメアが長いため、俗に命の回数券と呼ばれることがあるのだそう。
何故いきなりテロメアの話をしたかというと、これがニキビと大きく関わっているからです。
ニキビに悩んだ人は、このテロメアが長い人が多いのだという。
つまり長寿の可能性を持っていることになります。
長寿……。
ただ悪戯にこの苦しい生を長引かせるだけだったら、地獄です。