軌跡~ある教員サークルの興亡~12
サークルの活動それ自体は、極めて真面目なものです。
一人が模擬授業を実施し、他のメンバーは生徒役としてそれを聴く。
終わったら、皆でその出来についての批評、討論を行うというものです。
教員を目指す人にとってはとても有益なものである気はします。
なぜこういった活動をしているのに、正式なサークルとして認められないのか不思議に思うほど。去年度から申請しているにも関わらず、学校側から認可が下りないというのです。
ほとんど出会い系サイトの権化にしか見えないテニスサークルは正式な活動として認められ(偏見ですが)、部室まで与えられているというのに。
今、その理由を考えてみると、いくつか原因が見当たらないでもありません。
まず、活動内容が真面目過ぎること。
教員になるための技術を授業ではない課外でも行おうというのがいかにも固かったのかと。
もちろん正式なサークルにだって真面目っぽく見える団体はいくらでもあります。
英会話サークル、速記サークル、手話サークルなどは名前からして固い。
ですが、これらは拡張性があります。
他の国の人と交流したり、大会で技術を競ったり、ボランティアを行ったりと、活動の幅を広げていけるのです。
一方で教員サークルにはそのような広がりの可能性がなかった。
純粋に授業の腕を磨くだけの活動に、進化や深化はあれど、横への展開はほぼ無いと言っていいでしょう。
活動が教職の技術に絞られてしまうという、目的的に過ぎる点が教員サークルの欠点だったのです。
目的的、という単語をいつか使ってみたいと思ってここで用いていましたが、ぴったりの言葉だと感じます。
社会では美徳とされる「真面目」。
それが大学生活では足を引っ張る形になっていたのだと思えます。
そういえば、サークルメンバーも真面目そうな人ばかりです。
眼鏡率が高いのがそれを物語っています。
眼鏡=真面目、というのもあまりにステレオタイプな気もしますが、ともあれ。
三年生の主要メンバー、桃野さん、畑山さん、本須賀さん、二年生の久慈さん、一年生の米野さん、片瀬さんと、サークル全体の半分以上がミスター&ミス眼鏡です。
自分はその頃は、眼鏡を掛けたり掛けなかったりです。ギリギリ裸眼で黒板の文字が見える視力を保っていました。
そういえば米野さんは「私、眼鏡フェチなんです」とか公言する始末。
あれは、遠回しに久慈さんへアプローチを掛けているつもりだったのかと思い返されます。
けれど、その見た目の真面目さも実は怪しかったりするのですが、それはまた後の話です。