鬱な現実~うつしぐさ~

うつ病者及びスキゾイド症者の語るしくじりだらけの人生

軌跡~ある教員サークルの興亡~21

 

後ろから突然に声を掛けられ、うろたえた自分。

白山さんは会場を歩きながら、生徒と言葉に挨拶して回っているようです。

「美味しいでしょ?チェーン店だけど手作りだからね」

屈託なく自然体で話す彼女に、「え、ええ。と、と、とてもおいしいですすす」と、屈託ありの不自然体で返す自分。

せっかくのサンドイッチを味わう余裕などありません。

 

 

かろうじて働く理性が、白山さんに向き直らせました。

そして、「ありがとうございます。お陰様で志望校に入れました。お世話になりました」という言葉を妙に抑揚なく、ロボットのような棒読みで口から出しました。

そのセリフだけは言わなくては、という意識が先走って感情を込められなかったのです。

「う、うん。河合君は頑張ったから。まだ会は終わりじゃないからね」

カウンター越しでない彼女は、いつもより小柄に見え、ちょっとだけ戸惑っているようでもありました。

自分の言葉を別れの挨拶だと受け止め、すぐに帰ってしまうのかと誤解したようです。

そうだと気付いた時には、白山さんは隣の女子のグループに囲まれ、こちらの言葉足らずを訂正する機会を逸してしまっている状態。

間が悪い人間っています。ここに。

 

時々教室のドアが開いて、遅れてきた生徒や講義を終えた講師が入って来ます。

人気がある講師が登場すると、生徒の方で「わぁっ」と声が上がって雰囲気が明るくなります。

続いてビンゴゲームがあり、最後に私立文系コースみんなで記念撮影をすることになりました。