軌跡~ある教員サークルの興亡~61
駐車場から入り口、廊下にエレベーター、どこを切り取ってみても非日常的な高級空間。
そんなところのレストランだか、カフェだか、パーラーだかが安いはずありません。
下手すれば、ケーキバイキングと言えど万の位まで行くのでは?と恐れつつ、今回は店に入る前に値段の確認をしっかり行いました。
正確にいくらだったのかは覚えていないのですが、「あれ?」と思ったことは確か。
安いのです、予想に反して。
多分4,000円に届かなかったはず。もしかしたら2,000円台だったかも。
とにかく安心して気が抜けたためか、記憶も朧になっています。
今確かめようとしても、赤坂プリンスは2011年に閉鎖されてしまって、各レストランのメニュー表ももう見られなくなっているのです。
本筋とは関係ありませんが、赤坂プリンスホテルの解体模様、必見です。
だるま落としみたいに、綺麗に数段ずつ低くなっているのが驚異。
ずらりと、でも上品に並んでいるケーキから、まずモンブランとチーズケーキとを取って、席に戻りました。
「美味しいなぁ」と声に出さず、黙々と食べ、今度はシュークリームとアップルパイを取って来ました。
本須賀さんは、チョコのムースとエクレアみたいなものの半分を食べ、「俺はもういいや」と、早々に戦線離脱します。
自分の勝手なイメージとして、甘いものが苦手という男性は、女性にモテたいがために嘘を言っているよう見えます。
渋い男、そう自らを演出している気がしますし、実際そう見えてしまいます。
米野さんや畑野さんを見ると、三つ目でフォークを動かすスピードが落ちてきています。
自分はまだまだ余裕。
前の店で、入店前に値段を見なかったせいで会計が予測できず、十分に料理の味を楽しめなかった上に、次にケーキバイキングがあると聞かされていたので、あまり量を食べれなかったのです。
腹四分目といったところでしょうか。
その前の店の分も合わせて元を取ろうと、更に白桃のタルトとフルーツたっぷりのロールケーキを運んでくると、「よく食べれるなぁ」と本須賀さんに声を掛けられました。
さすがにそれを素直な感心と受け取るほどおバカではありません。
呆れの色を見て取っています。
「美味しいし、甘いもの好きなので」
子供みたいな感想を述べると、他の三人から苦笑されます。
他のメンバーならば話は変わってくるのでしょうが、この四人組の中でケーキを六個食べるというのは、お上品とは言えないようです。
まだまだ食べられそうでしたし、もっと色々な種類を試したかったのですが、それを実行するだけの意思が挫けてしまいました。