鬱な現実~うつしぐさ~

うつ病者及びスキゾイド症者の語るしくじりだらけの人生

軌跡~ある教員サークルの興亡~81

 

アルコールが入ると、太陽の下とは違った一面を見せる人が多くいます。

素面の時に被っている対社会用の仮面が剥がれ落ちるのです。

そこにあるのは、その人の本性。

社交的な人が実はネガティブであったり、ガリ勉タイプの人が実はドスケベであったり、公平公正だと思っていた人が実は偏見の持ち主であったりと、大体が負の側面の発露です。

 

だから、土屋君が泥酔し、仮面を被れず、本音しか言えない中でも「友達でいてくれて、嬉しい」と言ってくれたのは、自分にとって革命的ともいえるほどに大きなことでした。

人付き合いに絶望し、血の池地獄に浸かっていた自分に差し出された一筋の蜘蛛の糸のよう。

 

 

言葉通り、気持ちよく酔っている土屋君は徐々に体重をこちらへ預け始めたので、眠りに落ちて運ぶのが難儀になる前に部屋へ戻そうと、トイレを出ました。

そこには片瀬さんが立っていて、心配そうな顔をしています。

「吐いてはいないけど、水をたくさん飲んだし、一応意識もあるから大丈夫だと思う」

「ありがとう。……なんかごめんね、大変な作業をさせちゃったみたいで」

どうして片瀬さんがそう言うのかと、視線を追ってわかりました。

こちらのシャツがびしょ濡れだったからです。それは土屋君も同じでしたが。

「ううん、構わないよ。それより、土屋君、頭から水を浴びちゃったから、タオルで拭かないと風邪ひいちゃうかも」

「水を浴びた?何してんのよ、もう……」

(このバカ男子たちは……)と言いたそうなのが伝わって来ました。

自分が止める間もなく、土屋君が蛇口をひねったのだとの言い訳もできましたが、彼と二人セットでおバカ男子と思われるのは、悪い気がしません。

「すいません……」

だからそう謝りました。