鬱な現実~うつしぐさ~

うつ病者及びスキゾイド症者の語るしくじりだらけの人生

さまようおにぎり

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ふと思い出す恥ずかしい過去。

いや、自分の場合、過去はすべて恥ずかしい。

うつ病になる前は特に。

 

そう考えていましたが、うつ病になった後も恥ずかしいことをしていたという衝撃の思い出を思い出しました。

恥ずかしい人間は恥ずかしい囲いから一生出られないのかと思い悩み中。

まともな人間になりたい気もします。

 

今回思い出した話はおにぎりに関係があります。

以前おにぎり特集で三回に分けた語り尽くしたと思いましたが、まだありました。

 

うつ病から回復したと思い、復職した職場の昼休み。

相変わらずおにぎりを鞄に入れていました。

ですが、いい年しておにぎりだけを食べるのが恥ずかしいと思えるくらいには成長しています。

成長しているならおにぎりじゃなく、普通のお弁当か外食にすればいいという気もしますけど、その時には思いつかなかったという。

 

まだ入ったばかりで、職場のどこで食事をしていいのかがわかりません。

いや、教えてもらった場所はあるのですが、そこは皆も使っていておにぎりを広げる勇気はありませんでした。

だからどこか一人になれる場所を探してフラフラと建物の中をさまよってみたものの「これ」という場所が見付からず。

 

仕方なく外に出ました。

あの時、何を求めて外に出たんだろう。

建物の中よりも食事ができる場所を探すのは難しいだろうに。

 

刻々と流れる時間。

減っていくお腹と残り時間。

サーモスの水筒からお茶を飲みつつ歩き続けます。

 

おそらくオフィス街と呼ばれる街です。

何でもあるようで、実は一人で食事が持参のお弁当を食べられる場所って少ないのだと気付かされました。

公園を見付けて、ひとまずそこでおにぎりを食べようかと思ったのですが、踏みとどまりました。

何故か?

雨の時を考えたからです。

 

その日は晴れていて、ベンチでおにぎりも食べられます。

でも、もし雨が降ったらどうすればいいのか。

それを考えるとおちおち食事も喉を通りません。

 

ひたすら歩き続け、何とか会館みたいな場所を見付けました。

建物内に入り、館内案内図には喫茶室とレストランの表示があります。

自分は恐る恐る喫茶室に入り、一番奥の席に着きました。

入り口にウェイトレスがいましたが、気付かぬふりで勝手に。

 

振り返って見れば、なんでそんなことをしたのか首を傾げます。

自分はリュックを開け、おにぎりを取り出しました。

そのタイミングでウェイトレスが水を持ってやってきます。

 

「ご注文は?」

慌ててラップに包み直したおにぎりを仕舞うと、自分はあわあわしながら「えっと、ないです」と言いました。

恥ずかしい……。

更に、「ここで自宅から持ってきたお弁当食べていいですか?」と訊いてしまいましたし。

何だろう。

頭おかしい。

今ならそう判断できます。

 

何故当時そう考えられなかったのか。

常識と呼ばれる神経がうつ病によって腐っていたのかもしれません。

 

「お弁当、ですか?」

三十代前半くらいに思える、ポニーテールの優しそうな女性の顔に不思議なものを見る不信感に満ちた表情が浮かびました。

「少々お待ちください」

彼女は入り口付近に引き返すと、もう一人のおばさんウェイトレスにこの状況を耳打ちしています。

やがてそのおばさんの方がこちらにやって来ました。

入国管理事務所にいそうないかつい顔をした女性です。

「うちはあくまで喫茶室なので、当店の物を召しあがるお客様だけに利用を許しているのですが」

ごもっともです。

「そ、そ、そうですよね。失礼しました。帰ります」

慌てると人って本当にどもるものです。

 

テーブルにポニーテールの女性が持ってきた水が寂しげに載っているのを後に、自分は店を出て、さらにそのなんとか会館からも出ました。

歩道に出てほっとして出るため息と冷や汗。

春浅く、肌寒いのに嫌な汗をかきました。

 

その日は結局最初に見付けた公園でおにぎりを食べました。妥協したのです。

幸い、次の日からは職場の建物内で一人になれる場所を見付けてそこで毎回昼食を取るようになりました。

トイレじゃありません。屋上にある機械室脇の物置です。

夏は恐ろしく暑かった。

じっと座っているだけで汗がじわっと出るほど。

 

自分がおかしいのは自認しています。

ただ、それを差し引いても街の中で一人でお弁当を食べられる場所って少ない気がします。

みんなどうしてるんだろう。

今でも疑問です。