鬱な現実~うつしぐさ~

うつ病者及びスキゾイド症者の語るしくじりだらけの人生

軌跡~ある教員サークルの興亡~45

 

人間関係がほぼ無くなりつつある大学生活において、サークルは自分にとって貴重かつほぼ唯一の人と関わる場となっていました。

だから、それほどドラマチックなことが起きるでもなく、単色の生活が続くかに見えたある日、それは突然に訪れました。

 

久慈さんと米野さんとは次第にうまくいかなくなって来て、夏休み直前に行われたサークルの飲み会の時に二人が別れたのを知らされたのです。

報告を行ったのは米野さん自身。

その日は久慈さんがいなかったこともあり、酒席のテーマは、二人がどんな風に付き合うに至ったか、どんな付き合い方をしたか、そもそも付き合っていたのかについてでした。

米野さんは最初こそ言い渋りましたが、「もう別れました」と宣言した後は久慈さんに大して相当鬱憤が溜まっていたのか、堰を切ったように文句を溢れ出させました。

 

曰く、手を握ろうともしなかった。

曰く、髪型を変えたのに気付いてくれなかった。

曰く、二人で飲みに行ったのに八時前に返された、等々。

 

 

当時はまだこの言葉はありませんでしたが、米野さんは相当な肉食系。

正直な話、女の子がこんなにも積極的なのを間近で見て驚いていました。

米野さんの言動は少女漫画そのままで、傍らで聴く分にはきっと微笑ましく感じたのでしょうが、直に聴かされると生々しくて赤面してしまいます。

うぶだった自分は、桃野さんや本須賀さんの尋問に答える米野さんの答えを、居酒屋の奥の方の席で黙って拝聴するのが精いっぱいでした。

 

中でも桃野さんの訊き方はエグいものです。

「なんだ、じゃあAもBもCもやってないのか」とあからさまな問いです。

お酒の席でなければセクハラになりかねないことを、彼は平気で口にします。

お酒が入っていれば、セクハラの許容範囲が広がるという考えは好きではありませんが、アルコールにはそのような力がないとは言えない、気もします。

というのもこんなやり取りがあるからです。

「腕を組んだ時に、胸を当ててみたりしたのか?」と桃野さん。

米野さんは赤くなりながらも、「そんなことは……しました」とか答えます。

セクハラに関しておおらかだった時代。

 

(そっか、したのか……)

と米野さんの痩せた体を盗み見しながら、自分は何杯目かわからないビールを飲んでいました。

胸、あると言えばあるけど、痩せすぎてて肉体的な魅力はないなぁ、と失礼なことを考えつつ。