鬱な現実~うつしぐさ~

うつ病者及びスキゾイド症者の語るしくじりだらけの人生

軌跡~ある教員サークルの興亡~51

 

「じゃあ行こう。お台場の方を回ってみようよ」

お台場……。

確か自分が大学生になったくらいから、東京のデートスポットとして注目され始めた場所です。

確実に縁が無いので、そこに何があるのか、何ができるのか、そもそも東京のどこにあるのかを知りませんでしたし、知ろうともしませんでした。

そんなお洒落であろう場所に誘われるとは意外で、恥ずかしながら気分が高揚したものです。

いつか恋人ができた時の下見としていくのもいいかと、無謀なことも考えました。

 

約束の土曜日、自分は午前十時に渋谷の街に立っていました。

自宅がある私鉄駅から大学へは、渋谷で山手線へ乗り換えをするので、渋谷は詳しくはありませんが、不案内でもありません。

それでも十時半の約束の三十分前に着いたのは、東口や西口といった出口の場所を改めて確かめておくためです。

というのも、本須賀さんが、「どこに車を停められるかわからないから、待ち合わせ場所は当日、電話で言うよ」となったからです。

 

 

随分適当だとは感じましたが、そういうのが大人の待ち合わせ方かと思い、異を唱えませんでした。

が、この方法はうまくいくはずもなく、「渋谷に着いた」と本須賀さんの車の助手席に乗っているであろう畑野さんから連絡があり、自分が車に乗り込むまで実に三十分はかかりました。

本須賀さんも畑野さんも、渋谷にはほとんど来たことがなく、車道が縦横無尽に走っており、さらには駐車禁止の場所ばかりだというのを知らなかったのです。

後で聞くと、渋谷と言っても所詮駅は駅。どこにでも車は停められると考えていたとのこと。

だから、車が止められそうなところを見付けると、こちらのPHSに連絡が入り、「今電気屋の横だから」と聞けば、そこに向かって走り、「やっぱりだめだ。停めちゃいけないみたいでクラクション鳴らされた」となり、「少し離れたところにしよう」と変わって、「郵便局前なら停めていられそう」と言われれば、そこまで走ります。

ところが自分が目指したのは渋谷中央郵便局で、渋谷郵便局とは逆方面であったりと、ややこしいことになり、こちらの勘違いを修正し、やっと合流できた時は互いにご機嫌とも言えない心持ちになっていました。