鬱な現実~うつしぐさ~

うつ病者及びスキゾイド症者の語るしくじりだらけの人生

軌跡~ある教員サークルの興亡~63

 

「次に付き合うとしたら、どんな人がいい、とか決めてる?」

畑野さんがそう言って、話を元に戻しました。

彼女は、米野さんの恋愛について、やけに親身になっているように思えます。

「久慈さんがあんなでしたから、今度は優しい人がいいです。思いやりがあって、温かい人」

「なるほどなるほど。例えば河合君みたいな?」

「え?」「は?」

米野さんと自分が同時に声を発しました。

「お似合いだと思うんだよね、二人」

こちら二人の顔を交互に見て、畑野さんが納得顔をします。

 

 

「そうだな」

と本須賀さんも同調。

「積極的な米野さんと、消極的な河合君とでバランスもいいし」

「普段おっとりしている米野と、水面下で物騒なこと考えてる河合だから、補い合える部分はあると思うな」

こういう時は、互いの良い面を並べるのが普通だと思いますが、米野さんはまだいいとして、自分は結構な言われようだった気がします。

 

ともかく、このやり取りで、今日のドライブに何故誘われたのかが分かりました。

きっと本須賀さんと畑野さんは二人でいる時にも、米野さんの別れについて話し合い、それなら次の相手に自分を据えてみようと思い付いたのでしょう。

どこまで本気で、どこからが遊びなのか不明ですが、迷惑な話です。

自分には、白山さんという立派な片思い相手がいるのですから。

 

「河合君は好きな人いるじゃないですか」

それでも米野さんがこう口にし、言下にお断りされなかったのにはほっとしました。

「河合だって、いつまでも片思いをしているわけでもないだろう?」

本須賀さんは知らないのです。

自分が大学四年まで、ずっと白山さんを思い続けるのを。

ただ、大学一年当時の自分でさえ、そんなに長く片思いが続くと予想していませんでした。

だから、「どうでしょう……」とだけ答えました。