鬱な現実~うつしぐさ~

うつ病者及びスキゾイド症者の語るしくじりだらけの人生

軌跡~ある教員サークルの興亡~54

 

「河合君も、米野さんに訊きたいことあるんじゃない?」

助手席から、畑野さんが横顔だけ見せて尋ねます。

「河合君は、結構鋭いところ突くからなぁ」

米野さんは、言葉でこそ警戒しますが、顔は笑っています。

(これがSMで言う、マゾヒストなのか?)と、うっすら考えましたが、口には出せません。

 

 

「訊きたいこと、ですか。そうですね……。別れたって言いましたけど、そもそも本当に付き合っていたんですか?」

「そこ?!」と本須賀さんと畑野さんが同時に言います。

カップルだけあって息が合っています。

「根本的なことを訊いてくるね。うーん、告白し合ったかと言うと、ちゃんとしましたよ」

「どこで?どんな風にです?」

ちょっと桃野さん成分が入った調子で追及してみました。

人の真似はすまいと思っても、自己が確立されていないから、話すにしても誰かの性格をつい借りてしまうことがまだありました。

 

「私が告白したのは、手紙。好きです、付き合ってください、って書いたの。本当はもっと長かったけど、略せばそうなるよ」

少し頬を赤らめさせて米野さんが答えました。

「久慈君は、米野さんに好きって言ったの?」

「言いました……。いえ、言わせたのかな……」

「言わせた?米野さんらしいと言えばらしいけど」

「河合君の中で私はどんなイメージなの?!」

強い調子を作ってそう訊かれると、女子と普通に会話している事実に気付かされ、気分が浮き立ちます。

たとえ、異性と見做せない相手でも女子は女子です。

矛盾していますが、本能と理性が別々に判断している感覚でしょうか。