軌跡~ある教員サークルの興亡~67
土屋君の見た目は、同性からしてもまあまあ格好良く思えます。
サークルでの発言もしっかりしていて、地頭の良さが窺えます。
わずかにウェーブのかかった髪は人工パーマなのか、天然か見分けがつきません。
よく髪型を変えるお洒落さんで、その時は長くも短くもなく、そのまま就活ができるくらいの清潔感がありました。
身長は自分と同じく170センチほど。
柔道を小さい頃から高校まで続けていたためか、足は太く、短めです。
高校の身体測定で、身長175センチくらいの同級生に、座高で8センチくらい勝ってしまった自分より短く見えます。
でも、全体的なイメージとしては、自分なんかとは比べものにならないほど魅力的な男性です。
だから、友達がいないと言われても、にわかには信じられなくもありました。
「河合はいるのか?友達」
「いない」
即答です。考えるまでもなく。
「そうかぁ」
その声に親しみの色が見えました。
同情や憐みではない、同調の色です。
「友達になれるかなぁ、俺らは」
「努力するよ」
引き続き、よく考えずに口をついて出た言葉に、土屋君と片瀬さんが「アハハ」と笑いました。
「そういう所が河合君らしいよ」
「そうだなぁ」
土屋君はそれからすぐに真面目な顔に戻りました。
「河合は危なっかしいからな。俺も努力しなきゃ友達でいられなくなるかもしれん。でもよろしく」
彼が右手を差し出してきたので、自分も同じようにしました。
土屋君は少し顔を赤らめさせています。
そして、照れ隠しなのか最後にこちらの手を痛いほど強く握り返してから、握手をほどきました。
「よかったねぇ」
片瀬さんは、自分の子供に友達が出来たかのごとく、深い安堵がこもった声を上げました。
少々大袈裟に思えますが、後々土屋君とよく話をするにつれ、彼女はいつもそんな感じなのだと知りました。
片瀬さんは、場面場面で女優のように人格が変わるのです。