鬱な現実~うつしぐさ~

うつ病者及びスキゾイド症者の語るしくじりだらけの人生

軌跡~ある教員サークルの興亡~65

 

サークルが失われたこと。

それがいいか悪いかの判断は、卒業してずいぶん経った今でも難しいところです。

ただ、ずっと持続、継続し得る可能性があったかと言うと、それはないとの判断を下さざるを得ません。

潰れるべくして潰れたというのが実情でしたから。

 

 

何があったか、一つずつ語ります。

まず一つ目として、自分に友達が出来ました。

 

「夏休みに入ってから、彼はずっと、ほんとにずーっと河合君のことばっかり喋ってたんだよ。バイセクシャルじゃないかと思うくらい」

サークルメンバーで隅田川で花火をし、更に花火大会を見る、といった企画が持ち上がり、実行された後の飲み会で、片瀬さんが土屋君を手で示しながら言いました。

もっとも途中から雨が降り出し、花火大会は見ずに居酒屋に流れたのですが。

恋人である土屋君のことを「彼」と呼ぶのが、自分には好ましく思えました。

二人でいる時は、もちろん名前で呼ぶか、「~君」や「~ちゃん」と言っているのでしょうが、第三者の前ではそんな甘えた言い方をしないところに礼節を感じたのです。

簡単に言えば、いちゃつきを見せ付けないから安心したということです。

だって羨ましいから。

そこにおいて片瀬さんは、本須賀さんのことを「モト君」と言っていた畑野さんより大人だと思いました。

 

「自分のこと?」

何をそう話すことがあるのだろうと、純粋に疑問に感じます。

というのも、同じ学年、同じ学科、同じサークルだというのに、土屋君とはろくに口を利いたことがなかったためです。

「そう。染谷さんの模擬授業を容赦なく批判したり、予備校の時のチューターをずっと思い続けていたり、いつも一人で授業を受けていたりするのを、全部すごいなってべた褒めしてたんだよ」

それらのどこに褒められる要素があるのかわかりません。

恥ずかしいことの羅列です。

特に染谷さんのことについては、一刻も早く忘れて欲しい気持ちがありましたし。

 

隅田川近くの居酒屋チェーン店で、二つのテーブルを教員サークルで埋めていました。

自分は端っこに陣取り、目立たずに座っていましたが、メンバーにアルコールが入るにつれ、席が流動化していきます。

特に、今回はテーブル席ではなく座敷だったので、話題によって場所を移ったり、あるいはトイレなどで一度離れて戻ってくると席が他の人に取られているなどして、周りの人が目まぐるしく変化していました。

自分は最初、ドライブで少しは距離が縮まった本須賀さんや畑野さんと話していましたが、やがて二人は他へ移動し、次に二年男子の築地さんとボソボソ話したり、一年の軍事オタク保科君の一人語りに耳を傾けたりしていました。

それが、いつの間にか隣に土屋君、正面に片瀬さんとの並びになったのです。