軌跡~ある教員サークルの興亡~71
「付き合っている相手が他の人と仲良くなるのを見て、嫉妬し合って気持ちを高めているのかもね」
片瀬さんが、こちらが何かを言うのを期待した目付きでそう続けます。
「変態だね」
おそらくはこの種の回答がお望みのはず。
話の流れが読めてきて、嬉しい気もします。
でもよくよく考えれば、土屋片瀬コンビの話の導き方が上手かったのでしょう。
だから二人は、待ってましたとばかりに笑顔を見せます。
「本当そうな。変わってると思うぞ、あの二人は」
「ちょっと普通じゃないよ。河合君は気を付けた方がいいかもね」
この時に受けた忠告が、後になって杞憂ではなかったのが明らかになります。
夏休みの中盤、お盆の頃に、他の大学の教員サークルと合宿に行くとのイベントが企画されていました。
どこにそんな伝手があったのか、自分の知らないところでうちのサークルはインカレになっていたという。
二泊三日で妙高へ行くとのこと。
過去、高校のサマーキャンプやウィンターキャンプを、友達がいないのといじめとを理由にサボタージュして来た自分です。
最初は合宿があると聞かされても、行く気はありませんでした。
けれど、土屋君と友達になれたのが思っていた以上に嬉しかったのでしょう。
友達がいるのなら、行ってもいいかもという気になって来ました。
更には、その土屋君から、「合宿ダルいけどな。お前が行くなら行ってもいいかって思ってんだけど、どうする?」と、まるで友人同士の模範会話集に収められているやり取りが現実に交わされたのも大きかった。
あれだけ忌避して来た、同年代との旅行に行こうと思い決めたのです。