鬱な現実~うつしぐさ~

うつ病者及びスキゾイド症者の語るしくじりだらけの人生

軌跡~ある教員サークルの興亡~73

 

本須賀さんの車が宿の駐車場に入ると、先に到着していた、合同主催相手であるS大学の学生が迎えてくれました。

男性三人、女性一人の参加です。

男性陣は全員眼鏡、女性も服がひらひらしたお嬢様っぽいワンピースを着た真面目な感じです。

宿舎は修学旅行で使うような、松竹梅で言えば限りなく梅に近い竹レベルの建物です。

綺麗でもなく、といって不潔なわけでもない。

どこの観光地でもありそうな旅館です。

温泉で有名だというので、浴室らしい窓からはずっと湯気が立ち上っています。

 

 

他に泊り客を見た覚えがないので、宿は貸し切り状態です。

二十畳ほどある広間を集合場所兼男性陣の就寝場とし、もう一つの六畳間を女子の部屋としました。

いくら払ったか覚えていないのですが、それだけ贅沢に空間を使いながらも、取り立てて高額ではなかったはず。

もし目をみはる額ならば、ケチな自分が覚えていないわけがありません。

 

夕方に到着したので、一日目は特に行事もなく、親睦会を兼ねた飲み会が開かれました。

自分は初対面の相手には、そんなに悪く見られないようで、S大学の学生とも結構打ち解けられたと思います。

三日間だけの付き合いだから、良い面だけを見せて行こうと気負ったためであるかもしれません。

 

飲みながら聴いた話によると、あちらも教員サークルという名は冠していても、学校からは正式に認められていないとのこと。

メンバーも合宿に来た四人きりだそうです。

元々四人は別のサークルに所属していたのだけれど、就職を前に教職について深く取り組みたいとの思いから有志で集まって、今回の合宿がいわば決起集会になったのだそう。

全員三年生で、一番初めにサークルを新しく立ち上げようと声を上げた人の友達が、偶々桃野さんの高校の同級生で、その伝手から今回の合同合宿が実現したのだとわかりました。

そんな方たちだから、やっぱり真面目です。

アルコールが入っても羽目を外すことなく、互いの学校の相違を面白おかしく話すのが話題の大半を占めていました。

そこら辺は、すぐに恋愛話や猥談=わいせつな話に持っていこうとするうちのサークルの三年生とは違うな、と感心したのを覚えています。