鬱な現実~うつしぐさ~

うつ病者及びスキゾイド症者の語るしくじりだらけの人生

軌跡~ある教員サークルの興亡~77

 

宿には朝食しかついていないため、夕食は町の中華料理屋で済ませました。

一応夜に、教員サークルらしい模擬授業の予定が入っていたので、そこでアルコールは入れません。

海に向かって叫ぶといった、今思い出しても赤面する企画を行った交流会でも多少の効果はあったのか、前日よりは打ち解けているよう感じました。

S大学の学生が海へ向かって何と叫んだのか、覚えていません。

記憶に残るほど衝撃的なことは言わなかったのでしょう。

ですが、皆気恥ずかしさを持ち、その共通体験が絆を強める一助となったのは疑いありません。

川に行った班は、もっと穏やかな形で親睦を深めたのか、まるでずっと昔から友達であったような仲に見えます。

 

 

その日の模擬授業は、S大学の学生が担当した総合学習でした。

何種類かのCMを題材として用い、そこに表れた商品の特徴、役者の演技、音楽、文字の入れ方などに、どういった仕掛けが施されているのかを分析する、高度で、かつ興味深い内容です。

CM製作者にも実際に会って話を聞いたというだけあって、内容に説得力があり、また、CMによって購買意欲を促進させられる仕組みをまざまざと見せつけられ、メディアの使い方を間違えると危険なことになるとまで思わせられました。

発表者であるS大生の意図もそこにあり、テレビの映像を鵜呑みにせず、どこかで批判的な目を持っていなければ、煽動に軽々と乗る人間になってしまうとの警鐘を投げ掛けて授業を締めくくりました。

 

見事な発表に自然と拍手が起こります。

その知的好奇心が刺激され、高揚した状態から二日目の打ち上げの飲み会が開かれました。

丸一日一緒にいて、何となくそれぞれの人となりが分かり、和やかな雰囲気の中で杯が重ねられます。

徐々に酒宴も盛り上がり、話題も前日のように、終始硬いものではなく、高尚なものから下世話なものに流れ始めました。

 

自分もS大学の先輩から、海で聞いた米野さんとの関係を問われたりしました。

何の関係もなく、自分には他に好きな人がいるのだとの説明も、宴の賑わいの一つになります。