鬱な現実~うつしぐさ~

うつ病者及びスキゾイド症者の語るしくじりだらけの人生

軌跡~ある教員サークルの興亡~82

 

「いいじゃないか。気持ちがいいぞ」

突然意識を浮上させた土屋君が声を上げましたが、すぐに体がだらんと軟体動物状態になります。

二人三脚の調子で足の動きを彼と合わせ、何とか座敷まで戻りました。

 

 

広間のテーブルは部屋の隅に移動し、そこで飲み会が続けれられていますが、自分たちが外へ出ている間に何人かは抜けて、それまでより規模は小さくなっています。

テーブルとは反対側の畳の上には布団が男子の数だけ敷かれていたので、その一つに土屋君の体を横たえました。

片瀬さんが重い彼の頭を、自室から持って来たタオルでごしごしと拭き、苦労して枕に載せた時にはもう寝息が聞こえていました。

「ありがとう。……本当にまあ、気持ちよさそうな顔しちゃって」

言われてみれば、口角が上がっていて、寝ているのに笑っているように見えます。

「私と一緒に寝ている時よりも幸せそう。河合君に介抱されたのがすっごく嬉しかったんだろうなぁ」

そう聞いて素直に喜びたいものの、発言の前半が気になってしまいます。

(私と一緒に寝ている)

おおよそ想像はついていましたが、そういう仲だというのをさりげなく聞かされると、こちらの方が赤面してしまいます。

片瀬さんは、自分が生々しいことを言ったのに気付いていない様子で、タオルで拭いた時に乱れた土屋君の髪を軽く直していました。

この若さで、付き合っている男女で、ただ寄り添い眠る、だけで済むわけがないだろうな、と、いやらしいことを考えそうになる自分が嫌で、「もう大丈夫だと思うから、テーブルに戻るよ」と立ち上がりました。

赤くなった顔を見られないようせかせかと動作を急ぎます。

背を向けた自分に、片瀬さんが後ろからもう一度、「ありがとう」というのが聞えました。