鬱な現実~うつしぐさ~

うつ病者及びスキゾイド症者の語るしくじりだらけの人生

軌跡~ある教員サークルの興亡~84

 

Mさんの発言で一時的な恍惚状態となっている時、そこに現実的な声が割り込みました。

「俺、もう寝るよ。明日も運転があるからな」

案の定、煙草とライターを持って部屋に戻って来た本須賀さんが、一度テーブルに寄ってそう言うと、座敷の奥へ行き、空いている布団に横になりました。

片瀬さんもいつの間にか消えています。

安らかに眠る土屋君を確認し、女子部屋に戻ったのでしょう。

 

 

時計の針は十二時を回っていますが、まったく眠くありません。

むしろMさんの言葉により覚醒してしまったと言っても過言ではありません。

「じゃ、じゃあ、ホテルには行かないの?」

桃野さんが前のめりになって鼻息荒く尋ねます。

興奮を超えて、必死さが彼の態度から伝わってきます。

「行きますよ、ちゃんと」

周囲のメンバーの熱狂につられてか、Mさんの制御弁も外れてしまったよう。

訊けばなんでも答えてくれるフィーバー状態です。

「ほ、ほ、他は?くるっ、車の中とか?」

桃野さん、もう舌が回っていません。

踏み込み過ぎて、自分なんかは若干冷めつつあります。

「車はお互いに乗らないんですけど……」

「でも、お互いには乗ってるんだよね」

S大の男子も、眼鏡に似合わないスケベ発言です。

「そう、なりますね」

 

合宿が終わった後のS大でのサークル活動が心配になるほど、Mさんはあけすけな告白を続けます。

「あとは、二人とも一人暮らしなので、アパートでも……」

「ヤるんだ?」

桃野さんが飢えたピラニアのようにどこにでも食い付きます。

とんでもなく女性に飢えているんだな、と傍観していました。