鬱な現実~うつしぐさ~

うつ病者及びスキゾイド症者の語るしくじりだらけの人生

軌跡~ある教員サークルの興亡~83

 

テーブルの隅に戻ると、畑野さんと本条さん、それから本須賀さんが欠けているのに気付きました。

残っているのはS大学の三人の男子と、女子のMさん、桃野さんに米野さんといったメンバーです。

畑野さんと本条さんは女子部屋で休むことにしたのでしょうが、本須賀さんは男子の寝床にもいないので、行方不明です。

新しい紙コップにウーロン茶を注ぎながら、彼がどこに行ったのか考え、そういえば飲みの最中にも三十分毎くらいに「ちょっと一服してくるわ」と言って席を立っていたのを思い出しました。

この座敷は禁煙なのか、それとも非喫煙者に遠慮したのかわかりませんが、今もきっと一服タイムなのでしょう。

 

「で?カラオケの部屋に入ったらどうなのよ」

桃野さんが上擦った声でMさんに訊きます。

真顔で、目だけがエロいという、完全なセクハラモードに入っている状態。

話は危険水域に入っていると見えます。

「いえ、もう、ドアを閉めた瞬間goですよ」

米野さんが両頬に両手を当てて「キャッ」と声を上げました。

話がクライマックスの時に席に戻ってしまったようです。

 

 

「goってなに?わからないよ。なぁ、河合」

自分が戻ったのを目ざとく見付けた桃野さんがすかさず言いました。

そこで巻き込まれたくありませんが、話してくれるなら聴きたくもある話題。

そういうお年頃です。

片瀬さんの「私と一緒に寝ている」発言の余波も頭に残っており、あっち方面へのスイッチはオンのままでしたし。

「ええ、詳しく教えて欲しいです」

こんなところで桃野さんと気が合ってしまいます。

だから、基本は似ているところがあると言うのです。

 

「あれですよ。アレ。言わせないでください。恥ずかしいコトですから」

Mさんが真っ赤になってそう述べた途端に、男どもの頭の上に悶々とした雲が湧き上がるのが見えました。

おそらく自分の頭上にも浮いています。

「でもカラオケボックスって、受付か管理人室かのカメラで見られてるんじゃなかったっけ?そういうコトをさせないために」

S大学生の一人が真っ当な意見を口にします。

「映っててもわからないようにヤるんです」

その回答に、質問者も含め、悶々の雲が真夏の入道雲のように成長していきます。