鬱な現実~うつしぐさ~

うつ病者及びスキゾイド症者の語るしくじりだらけの人生

軌跡~ある教員サークルの興亡~127

 

本条さんはこうも言っていたはずです。

畑野さんが本須賀さんの前に付き合っていた男が仁部さんだったと。

そう聞いた時には、スマートで誰からも好かれそうな爽やか男子を思い浮かべていましたが、自分のその想像に当てはまる要素が実物の彼にはどこにもありません。

体形こそゆるキャラのようなぬいぐるみっぽさはありましたが、生身の肉であるため暑苦しくはあります。

それに、いかんせん目が細く、瞳からは表情が読み取れないので人好きはしません。

(これが畑野さんの昔の男……)

信じられない気持ちです。

どの程度の付き合いだったのか気になるところ。

深い仲でなく、単に一緒に食事に出掛けたりするといった友達の延長線上にある関係だったのかもしれません。

 

 

「桃野君と喧嘩した一年生を見たいって、それで来たんだよ」

その畑野さんが説明しました。

そんな野次馬的興味からサークルに来るようになるのでは、またすぐに来なくなるのでは?と怪しみます。

「お前、これからずっと来られるんだろ?」

桃野さんがいいタイミングでそう尋ねます。

「ああ、就活で本格的に忙しくなるまでは体が空いたからね」

「そうか、よかったよ」と、桃野さんは本当に安心した様子。

それで彼が、自分が来なかったら辞めると考えていたのは本当の本気だったのだとわかりました。

桃野さんは身を引き、彼の穴を埋めるために仁部さんをどこからか呼び戻したのでしょう。

彼の強い意志が表れていました。

一方で自分はそうされたことにプレッシャーを感じてしまいます。

人との関わりが深まると、こうした問題も起こるのだと遅まきながら気付かされました。

人との軋轢、和解、諍いに、絆の回復。

中学、高校と人付き合いがほとんどなかったせいで、人間関係の波を読む能力が身に付いていません。

学生時代のいじめや無視の余波は、こういう場面でしわ寄せがくるように思えます。

社会をスムーズに回す真人間を多くするためにも、やはりいじめは撲滅しなければいけないと、こうした観点から提言したいところです。