鬱な現実~うつしぐさ~

うつ病者及びスキゾイド症者の語るしくじりだらけの人生

軌跡~ある教員サークルの興亡~132

 

「知ってるか?畑野さん、あの男共全員と付き合ってたんだぞ」

「知ってる。本条さんから聞いたから」

そう言うと、土屋君は「本条さん?」と意外そうな顔で言いました。

だから自分は合宿の駅のホームでのことを説明しました。

その後、畑野さん自身が桃野さんと付き合っていたのを、S大学の先輩と本条さんの前でも言ったのですが、上手くニュアンスを伝えきれない気がしてこちらは伏せました。

 

「そうか。本条さんも知っているのなら秘密ってわけでもないんだな」

「濃いメンバーだよね。揃いも揃って」

「はは、そうだな。ただ桃野さんはヤれなかったけど、仁部さんが行為に及んだ時、畑野さんは初めてじゃなかったらしいぞ。だから男遍歴はもっとあるみたいだ」

薄々そんな話になる気はしていましたが、土屋君が言うとあまり淫靡な印象を受けません。

持って生まれた人徳でしょうか。

「だから河合にもチャンスはあるぞ。気に入られてるんだからな」

そんなにも畑野さんが性的に奔放だと聞き、期待するよりは気持ちが萎えてしまいます。

「それで据え膳て言ったんだ?ちょっと苦手かな、そういうタイプ」

そう話していることすらも、片思い相手の白山さんへの背徳と感じて自分が汚れてしまったと思うほどです。

潔癖が過ぎるのかもしれません。いや、それが普通なのか。

「そんなことを言う気がしてたよ。河合はH方面に淡泊だよな。あまりヤりたがってないだろ」

当時はまだ十代。

性行為についてはまだまだ欲求渦巻いていた時期です。

土屋君の目も節穴な……、と思いました。

「そうでもないけど」

率直な意見を口にしましたが、「そうかぁ?」と疑義を呈されます。

 

 

「にしてもだ。あのカップル頭おかしいだろ」

「ん?どの?」

いきなり話が変わったと思えたので、見た目が変なカップルがテーブルの周りにいるのかと店内に視線を流します。

「違う違う。本須賀さんと畑野さんだよ」

と土屋君はおかしそうに笑いました。

話が続いていたと知り、顔に血が上るのを感じます。

本当に会話が下手だなぁ、と反省しつつ。