うつ病の原因と心の充電池
うつ病の原因ははっきりしている。
前職の老人ホームにおける人間関係の挫折だ。
そこに至るまでに、性格の弱さや自意識の欠如などの精神的背景は蓄積されていたと思う。
ただ、そのような爆弾を抱えながらも図書館や博物館で働けていたことを考え合わせると、やはり私のうつ発症の主因は介護職の現場に求められる。
不思議なことに、他の精神的外傷とは異なり、うつになった当初の記憶は時間が経てば経つほどに鮮明になっている。
色褪せるのではなく、むしろより生々しくなって来ているのだ。
トラウマの万能の処方箋、「時間」ですらそれを薄くすることはできない。
もっとも、さらに長い時間が経過すれば「あんなこともあった」と心に乱れを生じさせずに思い出せるようになるのかもしれない。
けれど、まだ自分はその境地には達していない。
九年という時間が経つというのに。
九年と言えば、小学生が入学し、卒業し、中学に入学し、卒業するまでの時間に相当する。
それだけあれば、人は大幅に成長できるし、子供の頃の私も同様のはず。
ところがここのところの九年間は停滞に次ぐ停滞。
下手すれば後退しているような気もする。
うつ病を発症し、自宅療養を始めた時に、何が自分をここまで追い詰めたのかを思い起こし、分析し、結果を原稿用紙百枚分くらいにまとめて書いた。
その時はまだ過去を振り返ることができたのに、今はできない。
思い出すと落ち込み、余計欝な気分になるのが容易に予想できるから。
だから自分の書いた分でも読み返すことができずにいる。
過去にできて、今できないというのは、それだけ精神のエネルギーが流れ去ってしまったからなのか。
心の充電池はどこで充電できるのか。
それを知りたい気がする。