社会からの一本道
うつ病になった時の職場をどうやって辞めたのか、記憶が曖昧なまま今に至る。
辞表を書いた覚えはないし、お世話になりました、という挨拶をした覚えもない。
でも、その日老人ホームで食べたサラダのようなお寿司のことは覚えている。
腕のいい調理師が在籍していて、それも美味しかった、と思う。
帰り道、車で家へ向かう時に暑くて汗をかいたのも漠然と覚えている。
まだ二月だったのだけれど、季節外れの陽気が来たのか、それとも自律神経の崩れによるものか。
あの時は考えなかった。
その日を境に社会と断絶されるなんて。
あれから十年。
現実社会との溝は深まるばかり。
精神の傷が深まるばかり。
壊れていくのを日々感じる。