軌跡~ある教員サークルの興亡~85
「そう、ヤリます」
桃野さんのノリに乗ってしまうMさん。
バブル期並みにイケイケです。
といっても、自分はバブル世代ではないので、あくまでイメージですが。
「もう玄関開けたら二分で合体みたいな?」
S大の、さっきとは違う眼鏡先輩も理性が喪失しています。
昔、散々テレビで流れたサトウのごはんのCMキャッチフレーズをもじってそう訊きました。
そういえば、彼がその夜にCMを題材に見事な模擬授業をしたのです。
「二分も掛かりません」
「……ぉぉ……」
Mさんの衝撃の発言に、S大の男子三人と桃野さん、米野さん、それから自分だって声にならない声で呻きます。
おしとやかそうに見えて、することはしている。
さすが大学だ、と穿った認識をその時に持ちました。
その調子で夜も更け、テーブルを前にしながらも時々意識が飛び飛びになっていました。
ウーロン茶を飲んでいたつもりが、多分桃野さんあたりがビールか焼酎に差し替え、知らず知らずに大量に飲んでしまっていたのです。
酔いと眠気がない交ぜとなり、まともに起きていられません。
ですが、結局その日は朝まで飲みが続きました。
話題はひたすらにシモの方。いわゆる猥談です。
さすがにMさんの話題も尽きて、今度はS大男子のソープランド談義を途切れ途切れに聞いたような記憶があります。
六時半になると、ちゃんと顔も洗い、薄く化粧もし、さっぱりとした服を着た片瀬さんが座敷に入って来て、驚いたようにこちらを見ました。
「徹夜したんですか?!」
エロトークで一夜を明かしたのを冷静な第三者から見られるのは、かなり恥ずかしいものです。
中学生の時にHな本を持っているのが親にバレた時のような感覚でしょうか。
こちらもやはり自分は経験が(多分)なかったので、あくまでイメージです。